君をひたすら傷つけて
 お兄ちゃんは過保護で心配性。クールな表情で隠されているけど優しくて思いやりに満ちている。その思いは深い。初めて会った時はここまでお兄ちゃんの内面を知ることになるとは思わなかった。義哉が居たから、今の私とお兄ちゃんの今がある。

「心配してたの?」

「雅ならきっと頑張ってやっていくとも思ってた。でも、雅の事は心配だった」

 そんなお兄ちゃんの言葉に胸の奥が熱くなる。二年経った今でもお兄ちゃんと私の関係は変わってない。お互いに住んでいる場所は違うけど変わらない。学校を一回りして、仕事場を見て、よく行くスタジオに行くと、夕方になってしまっていた。

 そして、私が暇な時によく行く川べりに来ていた。

 お兄ちゃんを私はベンチに座り、目の前を流れる川に視線を移した。オレンジ色の眩い夕日に照らされた川はキラキラと輝きながら、ゆっくりと流れていく。変わらない風景があるのに、水は一瞬でさえも止まらず流れていく。一瞬一瞬の積み重ねが変わらない風景を作っている。

 そんな変わっているのに変わらないように見せる川が好きだった。

「疲れたでしょ。結構歩いたもの」

「流石に少し疲れたよ。自分で思う以上に運動不足だった。でも、今日一日は雅と一緒に過ごせて楽しかった。本当に楽しかった。ここまで来た甲斐があった」

 
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