君をひたすら傷つけて

自分で決めること

 お兄ちゃんは仕事のこともあり予定通りに日本に帰国した。寂しいと思うけど、仕事のあるお兄ちゃんを引き留める訳にはいかなかった。一緒にいると昔に戻ったような気もするけど、それ以上にお兄ちゃんと離れた時間が少しだけ関係が複雑になったような気もする。それが何か分からない。

 お兄ちゃんが日本に帰国してから私の生活は一気に勢いを増してきた。激しい環境の変化は私に考える時間さえもくれない。

 リズは今回の出張でイタリア進出を決めてきていた。ショーはフランスだけではなくイタリアでもたくさん行われているし、リズはフランスとはまた違った雰囲気を醸しだすイタリアに魅力を感じたらしい。自分の夢を熱く語るリズの傍で私も夢を見る。

 今はまだアシスタントだけど、リズのようにスタイリストになりたい。

 学校での勉強は所詮は実践には敵わない。

 私の傍には最高の教師であるリズがいる。彼女の技術を見ること、傍で働くことがどれだけ自分のためになるのかとさえ思う。そんな忙しい時間の中、私はファッションの学校を卒業した。就職先はとりあえずはリズの所で忙しさの中で就職活動さえも出来なかった。落ち着いたらと思うけど、いつ落ち着くのだろうかと思うほどの忙しさで、部屋に寝に行くだけの生活が続いていた。


『久しぶりに食事でもしないか?明日の夜とかどう?』

 アルベールからのメールが着たのは、私がアパルトマンに帰り、軽くシャワーを浴びて、ベッドに潜り込もうとしていたところだった
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