君をひたすら傷つけて

　朝起きてリビングに行くと、そこにはリズの姿はなかった。時間を見るとまだ八時で、仕事に行くには早い時間。でも、この時間にいつもならリズはリビングでゆっくりと寛いでいるはずなのに姿は見えない。デザイナーのディーとの会議はこんなに早い時間からではないはずだった。でも、私が知らないうちに仕事が入ったのかもしれない。

　そんなことを思いながら、朝御飯の用意をしていると玄関のドアが開く音がした。この時間に帰ってくるとなると、仕事に行って何か忘れ物でもしたのかもしれない。

　リビングに入ってきたリズの両手には大きな紙袋がいくつも持たれている。それをドンと無垢材で出来た床に置くとフッと息を吐き私を見つめるのだった。

「サイズは変わってないわよね」

「え？」

「だから、雅のサイズよ。服とか靴とか」

「う、うん。」

　私がそういうと、リズはニッコリと微笑み、大きな紙袋の中を漁ると、ガッと何かを掴むとビニールに包まれた服を何着も取り出したのだった。

「雅の勝負服にと思って持ってきたけどどう？」

そういって見せられたのは有名なブランドの服で逆立ちしても私にはレベルが高いものばかりだった。服に対して分不相応と思う。それに、いきなりこんな姿でアルベールの前に現れるってかなり変だと思う。

「普通の服でいいと思うんだけど。それにこんな高いものは買えないし。それに今日は会議もあるし」