君をひたすら傷つけて
「昨日の今日だから、事務所にあるものをかき集めただけだもの。その中でも一番可愛いのを選んだの。それにディーの服は一般庶民には手が出ないもの」

「スチールを撮らせてくれたらあげる。一度、モデル以外の女の子が着るのを見たかったの。雅は黒髪でエキゾチックですもの」

「いいわ。スチールは私が撮ればいいでしょ」

「リズなら綺麗に撮れるからいいわよ。時間がないのにカメラマンを呼んだら雅が遅刻よね」

「そうよ。アルベールに負けられないわ」

 リズが私の髪を触ったところで、後ろから大きな声が聞こえた。

「雅のデートの相手はアルベール・シュヴァリエなの?それならもっと着飾ってもいいわね。楽しくなってきた。リズ、髪はそのまま垂らす方がいいし、化粧はそうね。ナチュラルもいいけど、美味しそうな唇になるようにグロスはぽってりとした方がいいかも。それとイヤリングはいいのがあるから」

 確かに普通の格好であってもアルベールは光り輝く。その前で私が張り合う必要はないのに、リズもディーさんも本気で興奮し始めている。ディーさんに関しては自分の作ったワンピースをどれだけ輝かせるかを考えているみたいだけど、仕事の後に一緒に食事に行くだけでデートというほどでもない。

「あ、忘れてた。勝負下着もあるの」

「大事なものを忘れてはいけないよ。リズ」

 まさか勝負下着まで準備されているとは思わなかった。リズは真っ白な柔らかそうな紙に包まれたものを取り出すと、テーブルの上で広げてみる。ディーさんまで興味深々だった。
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