君をひたすら傷つけて
「美味しい。私の好きな物ばかり」

「それならよかった」

「アルベールは楽しい?」

「きっと雅の二倍は楽しんでいるから」

 アルベールの優しい微笑みと共にドキドキしてしまうほどの真摯な瞳の輝きが注がれる。至れり尽くせりの対応にドキドキする。そして、アルベールのことを考えてしまう。考え過ぎて可笑しくなりそう。

「アルベール。普通にしてくれる?こんな風にされるとどうしていいか分からなくなる」

「分かっているけど、雅が可愛いから。そうだよね。いつも通りって昨日言ったしね。でもさ、リズさんが原因とは分かっているけど雅が俺のためにそんなに可愛い恰好で来てくれたことが嬉しいんだ」

「服ってそんなに大事なの?私は変わらないのに」

「男は単純だよ。好きな女の子が自分のために可愛い恰好をしてきてくれただけでテンションは上がる」

 アルベールは苦笑しながら、そんなことを言うのだった。私がアルベールとの距離の取り方が掴めないようにアルベールも同じように掴めないのかもしれない。友達以上恋人未満。先があるのかないのか分からないけど、今、私は楽しいと思っている。

「美味しい食事だったし、アルベールと一緒に居ると楽しい」

「俺と一緒にいて楽しいと思ってくれて嬉しい。昨日あんなことを言ったことを少し後悔していたんだ。雅との関係が壊れるんじゃないかって。嫌われたり、避けられてしまったらどうしようかと思った」

「そんなことない」

「怖かった」
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