君をひたすら傷つけて
「え?」

「雅との関係がどうなるか分からなかったから」

「心配しないでも大丈夫。私はアルベールが大事よ。それに今日はとっても楽しい。アルベール。今日は楽しかった」

「雅…」

 アルベールは何か言いかけたけど綺麗な微笑みを浮かべた何も言わなくていいと思ったのはアルベールの顔が穏やかだったから。静かに流れる風が優しく私の髪を揺らしている。涼やかな風を感じながらアルベールを見上げると彼の瞳は潤みを帯びていた。

「俺も楽しかった。さ、アパルトマンに送るよ。明日は仕事だからね。帰りたくないけど」

 長い時間を一緒に過ごし、シャンパンとワインのボトルも空けた。アルベールもほろ酔いだし、私もほろ酔い。楽しい時間の終わりを残念に思う私がいた。

「まだ、飲み足りないの?」

 私の問いにアルベールは首を振り、お酒で少し甘くなった綺麗な微笑みを浮かべている。そんな微笑みにドキッとしてしまった。綺麗だと見惚れそうになる。

「そんなことないよ。シャンパンとワインのボトルを空けたから、それなりに酔ってる」

「そう?帰りたくないって?」

「雅を自分の部屋に連れ帰りたくなる」

「え?」

「俺は雅が好きだからもっと一緒に居たいと思う」
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