君をひたすら傷つけて
 私も子どもじゃないから大人の男と女が一緒に居たいということの意味が分からないわけではない。好きだから一緒に居たいと思う気持ちも分かる。私が高校生の時、義哉に恋をして、会っている間の時間が短くて、一緒に居られる時間が余りにも少なくて。

 一番傍に行きたいと思ったことも忘れていない。

 このままずっと時間が止ればいいとか、ずっと一緒に居られたらいいのにと何度思ったことだろう。それが恋だと私は知っている。

 でも、私は怖かった。

 一番好きの場所は義哉で、アルベールじゃない。

 アルベールの私のことを好きだと言ってくれた言葉に今はまだ応えられない。好きとは思うけど、好きの意味が違う。でも、そんなのは口にしなくてもアルベールは分かっている。私が本当の意味でアルベールに恋をしていないということを。私はズルい。アルベールの愛に優しさに私は甘えている。

 義哉を忘れることなんか無理だし、でも、私はこんな風にアルベールの傍にいる。アルコールで朧げな思考は申し訳なさでいっぱいになった。

 実際にアルベールと一緒にいる時間は私にとって楽しい。仕事のこととかを話しながらワインを傾けながら静かに食事をする時間は安らぎの時間でもあった。でも、アルベールを傷つけているのも事実だった。
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