君をひたすら傷つけて
「ねえ、リズ。私ね。アルベールのこと好きなの。でもね、義哉の時とは違うのよ。中途半端な私はアルベールの傍にいるのは良くないと思うの。だって、私はアルベールが望むようにはなれないもの」

リズは書類に何かを書きこみながら、静かに声をリビングに響かせた。

「それは雅が決めることじゃないわ。アルベールは義哉を忘れて自分だけと言ったの?」

「そんなこと言わないわ。そのままでいいって。」

「ならその言葉の通りにそのままでいいと思うわ。付き合い方はそれぞれだし、雅が無理をしてアルベールに合わせるのって可笑しいし、アルベールは求めないでしょ。雅は雅のままでアルベールの傍に居て、これからのことはこれから二人で考えたらいい。何も難しいことはないわ」

「でも…。私。まだ…」

「雅が義哉のことを心から愛していたのを知っているけど、義哉は雅がずっと自分に捕らわれて欲しいと望んだのかしら?雅から聞いている義哉はそんなこと望まないと思うけど」

 私のチェストの中にある箱の中に入れられた義哉の手紙を思い出した。義哉は私の幸せだけを祈っていた。そして、自分のことを忘れて欲しいとまで…。私は手紙の内容を思い出すとゆっくりと首を振る。

 すると、リズは椅子から立ち上がると、私の身体をそっと抱き寄せた。
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