君をひたすら傷つけて
 アルベールは自分のアパルトマンにさっさと入っていく。私はというと置いて行かれまいとして、竦んでいた足が簡単に動いたのだった。アルベールは自分の部屋の鍵を開けると、その空間にさっさと入ってしまう。ドアの前で躊躇する私を見つめるとニッコリと笑ったのだった。

「入ったら鍵を締めてね」

 アルベールのアパルトマンは外からの印象を全く裏切らない豪華なものだった。並べられている家具も調度品もどこか高級ホテルの雰囲気を漂わせている。これがアルベールの趣味なのだろうか?そんな思いで見つめていると私の目の前にスッとアルベールの顔が翳された。

「このインテリアは俺の趣味じゃないから。これは元々姉さんが住んでいた場所で結婚したから俺が代わりに住んでいる。帰って寝るだけの生活だから家具もそのままにしてる」

「そうなのね」

 いつものアルベールは質のいい服は来ているけど華美ではない。だから、部屋とのギャップに驚いた。でも、お姉さんの趣味と聞いて納得してしまった。

「そうだよ。俺の趣味じゃないから誤解しないように。それとキッチンはこっち。あんまり使ってないけど、鍋とかはあると思う。その辺は適当にして」

「うん。わかった。買ってきたものを冷蔵庫にいれてもいい?」

「いいよ」

 私は冷蔵庫を開けて、想像通りだった。中にあるのはミネラルウォーターと、ワインくらいで、他の食糧になりそうなのはチーズと生ハムしかなかった。
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