君をひたすら傷つけて

愛とは受け入れること

「男の部屋に泊まる意味は分かっているの?」

「そこまで子どもじゃないわ」

 一緒に居たい気持ちとこれからの時間に対しての極度の緊張が私とアルベールの間に流れていた。そして、そんな沈黙を破ったのはアルベールで静かに優しい声だった。

「雅が俺と一緒に居たいと思ってくれるだけで嬉しい。雅がいいなら、今日は泊まって行っていいよ。じゃあ、先にシャワーでも浴びておいで」

「いいの?」

「いいよ。本当に雅には敵わないよ」

 そういって笑ったアルベールの瞳は揺れていた。

「中にあるものは何でも使っていいけど、女性用はないよ」

「うん。ありがと。でも、アルベールの部屋から女性物が出てきても驚かないから」

「そこは驚いて欲しいな。じゃ、ゆっくり」

「うん。ありがとう」

 アルベールはニッコリと笑ってバスルームを出ると、私はホッと息を零した。そして鏡に映った自分の姿を見て驚いた。耳まで真っ赤になっていた。

「それにしても凄い。」

 鏡越しに見つめたバスルームはリビング同様、華美な空間が広がっている。真っ白な壁に白い家具。その家具にはアールヌボーをモチーフにした細かい彫刻が施されていて、これが機械で生産されたようなものではないのは明らかだった。バスルームを照らすライトはスズランの花をモチーフにしたような洗練された中にも可愛らしさを感じさせるもので女の人が好きそうなものだと思った。
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