君をひたすら傷つけて
「さてと、私は今から少し寝るから、雅も寝たらどう?」
「え?リズ寝るの?仕事って言ってなかった?」
「今から行くとか言ってないでしょ」
「ええ。だって、この頃、寝不足なんですもの。お肌のハリが無くなった困るでしょ?」

 リズの肌は手入れが行き届き、いつも綺麗になっている。これはリズの優しさだと私は知っている。

「リズ。私も寝るわ」
「そうね。じゃ、私が起きたら雅を起こすから、それまで寝てて」

 私はバスルームに行くと服を脱いでシャワーを浴びた。頭から少しぬるめのお湯を浴びる。肌を流れる水滴が優しく私の瞳から零れる涙を隠してくれる。流れるお湯なのか涙なのは私にもわからない。

 あんなに優しくされたのにアルベールを受け入れることが出来なかった。好きなのにそれだけでは足りないと言うのだろうか?自分が取った行動に涙を流すのは卑怯だと思う。それなのに私は泣いてしまった。昨日の夜、ずっと涙が止まらなかったのに、一人になり、シャワーが隠してくれるという甘さが涙腺を緩ませた。

 泣きながら思うのは…アルベールのこと。何度も何度もごめんなさいと呟く。無意識の拒否はアルベールを傷つけたの思うのに、最後までアルベールは優しかった。でも、その優しさが苦しかった。
< 451 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop