君をひたすら傷つけて
本当にそうだったらいいのにと思った。でも、それも明日のコレクションが終わってからのこと。そんなことを話していると、リズが私とアルベールが座っているところまで歩いて来た。

「アクセサリーの確認をしたいけどいい?」
「ああ。休憩ありがとう」
「休憩は取るのが決まっているから、それがたまたま一緒になっただけよ。私は何もしてないし」
「じゃ、雅。また」

 そういうとリズとアルベールは人混みの中に戻って行く。そんな二人を見ながら出来るだけ早く追いつきたいと思い、私も自分の仕事に戻った。コレクションは明日。最後の最後まで私は頑張りたいと思った。卒業して最初の大きな仕事。これに参加出来るだけ嬉しかった。

 コレクションの当日。必死で動き、自分の役割を終え、そして、舞台の袖からステージを見つめるとスポットライトの中でアルベールは誰よりも輝いていた。身に着けているのはシンプルなスーツだったけど、そのシンプルさの中にディーのラインへの拘りがあった。着こなすのが難しいスーツをアルベールは何事もなく着こなし、成功へと導いた。

 そしてコレクションは無事に成功し、アルベールが言っていたようにフランスとイタリアでもコレクションが行われることが発表されたのだった。

 打ち上げの行われている中、私は二階のベランダで夜の風に当たっていた。さっきまでの興奮をワインの酔いも醒ましたかった。興奮で指先が微かに震えていた。
< 459 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop