君をひたすら傷つけて
ディーのコレクションでスタイリストとしてデビューした私はリズが興した会社の社員としての地位もあり、スタイリストとしての順調に仕事をしていた。そして、アルベールもディーの専属をしながら、活躍の場を広げていく。中々会う機会はないけど、二人で会うことに努力をしていた。

 たった一杯のコーヒーだけでも幸せだった。

 少しの時間も無駄にしたくないと思うほど、私はアルベールの優しさに包まれ幸せだった。ディーのコレクションに以外で私のレベルではアルベールの仕事を請け負うことは出来ない。それが悔しいとは思うけど現実だった。

 来月末にフランスの宮殿でコレクションが行われる。そのスタッフにリズと一緒に私も参加する。それがアルベールとの久しぶりの仕事だった。

 私は雑誌の撮影の仕事を終えて部屋に帰るとリビングのテーブルにはたくさんの書類が並んでいた。リズはその書類を見て、スケジュール帳を見ながら難しい顔をしていた。そんなに難しい顔をしたリズを見るのは初めてだった。忙しげに指をテーブルにトントンと叩いているのはイライラしているのだと分かった。

「雅」
 
 やっと私が帰ってきたのに気付いたみたいだった。
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