君をひたすら傷つけて
リズは時間とかには厳しくて、仕事をしていく上で時間と信用は大事だと言っているのに、今回に限り、仕事が重なるなんてリズらしくない。

「事業拡大をしていて拠点を作っているのは知ってるよね。今はフランスとイタリアだけど、後、日本とアメリカも考えているの」

 フランスとイタリアの話は知っている。日本とアメリカと言うのは初耳だった。

「日本は他のスタッフとかに頼むとか出来ないの?」
「そうしたいのだけど、フランス語を話せるスタッフが足りないわ。日本で外国語となると英語でしょ。フランス語とイタリア語も話せないと厳しい」

 リズがこんなに困った顔をしているのは初めてだった。時間を確認したり、飛行機の時刻表を見比べたりしているけどそれも難しいみたいだった。

「まりえに通訳を頼んだら?まりえなら大丈夫よ。英語もフランス語も出来るはずだし」

 思いつきの言葉だった。でも、まりえは私たちと一緒に住んでいたので、もちろんフランス語はマスターしている。それに、英語もイタリア語も出来る。それに責任感もあるし、ここぞという時の度胸もある。

 それにまりえなら、リズも人柄とか性格も分かっているから安心してフランスでの仕事が出来る。断れない仕事なら、もう一つの方を他の信用できる相手に任せる方がいい。そう思っていたけど、リズの判断はそうではなかった。
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