君をひたすら傷つけて
それに私は今までリズにたくさん助けて貰ってきた。苦しい時も寂しい時もずっと姉のように傍にいてくれたのはリズだった。そんなリズがこんなに困っているとなると力になりたいと思う。

「わかったわ。行ってくる」
「ごめん。雅。ディーのコレクションもあるのに」
「これが最後の機会じゃないでしょ」

 この判断がよかったのかどうかわからない。それでも、リズは私の言葉を聞いて、ホッとしたような顔をしたから、これでよかったのだと思いたかった。

 日本に帰るのはフランスに来てから初めてで、日本を離れて既にかなりの月日が流れていた。あのまま日本にいたならば私は大学を出て社会人になっていたことだろう。そう考えてみると人生というのは分からないものだと思った。

「本当に助かる」
「でも、期待しないでね。会社の設立なんかしたことないし、ただのスタイリストで本当に何も分からないのだから」

 リズは私を買被り過ぎているところがある。だから、軽く釘は刺しておかないと大変なことになる。

「大丈夫。雅が日本に行っても困らないように出来る限りのことはしておく。雅はエマと一緒に動いて貰うことになるわ」
「エマ?」
「そう。エマ・ジョンソン。私のライバルで親友なの」

 エマ…。リズがライバルで親友という彼女はどんな人なんだろう。ただ、リズの友達だから普通の人物であるとは思えない。きっと、リズとは違った魅力のある人だろう。

「上手く出来るといいけど」
「雅なら大丈夫だと思うけど、困らないように最大限の準備をしておくから」
「お願いね」
「勿論。雅。本当にありがとう」
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