君をひたすら傷つけて
自分の部屋に戻ると、ベッドに横たわり、さっきのリズの話のことを考えていた。自分で出来るのかという不安があって、そして、アルベールになんて言ったらいいのだろうというのもある。最低でも半月は掛かる。そんなに長い間離れるのは初めてでどうなるのか心配でもあった。
 
 今まで積み重ねてきた時間がある。思いもある。なのに、なんでこんなに不安になるのだろう?日本に帰ることになるとは思わなかった。何度か携帯を手に持ち、そして、テーブルの上に置く。早く連絡したらいいのか、それとも明日でいいのか?

 悩んでいるうちに時間だけが過ぎていき、気が付いたら…真夜中になってしまっていた。白み始めた空をみながら私はゆっくりと目を閉じた。

 私が忙しいと同じようにアルベールの仕事も忙しさを増していた。今回のコレクションは同時に新作の衣装を何着も身に着けることになっていた。今回のコレクションのために何度も何度も衣装合わせをしていて、時間がない。私は日本に行く準備で忙しかった。

 何度も電話もしたし、メールもしたけど、なんと言っていいか分からずに私は言葉を探していた。『日本に仕事で行くことになったの』なんでたった一言が言えないのだろう?

 それが分からない。
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