君をひたすら傷つけて
アルベールからの定期便のような電話を終えて私は溜め息を零していた。また今日も話すことが出来なかったと思いながらカレンダーを見るとすでに出発まで刻々と時間は近付いて来ている。普段なら気にしないのに、今回は行先が日本。

 今までも仕事で一、二週間会えないのはよくあったことだけど、今回は少し違う。フランスに居るなら少し二人が歩み寄れば会えるけど、日本となるとそうもいかない。会いたいと思っても会えない。

 社の設立になると、話は難しく。事業内容もスタイリストという仕事は信用と人の繋がりがとても大事。いくら実力があっても、その実力を発揮出来るためのフィールドが必要になる。エマさんは海外では十分な実績は残していても日本で事業をするのは簡単ではない。そんな中でのリズの合同での仕事だった。

 そんな大事な仕事に私はリズの代わりにいくことになる。私はリズが来るまでを繋ぎ、リズが日本に来たなら私は入れ違いにフランスに帰国する。

 その任務は重大で…。中途半端には出来ないと思ったりもした。

 フランスに来てから、初めての日本帰国になる。友達にも会いたいし、お兄ちゃんにも会いたい。それに義哉のお墓にもお参りに行きたい。楽しみなところもあるし、不安なところもある。言い訳をすれば、きちんと会ってからというのもあったけど、何となく言い出しにくかった。アルベールに実際に会ったのは日本に行く一週間前で、すでに私の荷物もトランクに詰められていている状態だった。
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