君をひたすら傷つけて
モデルの仕事は服を綺麗に魅せること。そのために身体のメンテナンスを怠ることは出来ない。ライフスタイルから変えていく人もいるが、今までのアルベールは自然体だった。でも今回は結構頑張ったというだけあって、雰囲気が変わるくらいに身体のラインが変わっていた。

「本当に仕事に対して真面目ね」
「一枚の服が生み出されるまでの苦労を知っているから頑張らないといけないと思う」

 私の頼んだカフェオレがテーブルに届いたのはそんな話をしている時だった。

「私、日本での仕事に行くことになった。期間はそんなに長くないけど大事な仕事なの」

 私の言葉は一瞬その場の空気を凍らせたかのように思えた。アルベールの優しく穏やかな表情を消え、私を見つめるアルベールの姿があった。

「反対だよ」
「え?」
 
 まさかアルベールから私の仕事について反対をされるとは思わなかった。私の仕事を一番理解してくれていると思っていたから、私は驚いた。

 反対されるとは思わなかった。

 アルベールは少し困ったような顔をして、気持ちを落ち着けるかのようにカップに口を付ける。先ほどの表情が嘘のようにいつもの穏やかな表情を浮かべた。浮かべているように見えた。

「ごめん。雅。急に言われたから吃驚しただけだよ。日本での仕事頑張って」
「嫌なの?」
「嫌というか怖いかな。雅が日本に仕事で行ったら、そのまま帰ってこないのではないかと思ってしまう。向こうにはご両親も居るし、大事な友達もいるだろ。もしかしたら、そのまま日本で仕事をした方がいいと思うかもしれないだろ」
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