君をひたすら傷つけて
忙しいと思っていたけど、どこかの隙間にでもアルベールと会う時間を作れるのではないかと思ってたけど、それは甘かった。本当なら何回か会うつもりだったのに、リズが『ディー』のコレクションに掛かりきりなので、それ以外の仕事の殆どは私がすることになってしまった。

 リズは事務所を開いたとはいえ、今のところ私以外のスタッフを雇うつもりがないのか、二人で出来るだけの仕事をするようにしているようだった。イタリアには別のスタッフが居るが、その人はイタリアでの限定のスタッフでフランスには来ない。だから、フランスでの仕事は私がすることになる。

 ディーのコレクションはフランスだけではなく、ヨーロッパの主要都市で行われるからそれにリズは同行している。リズが居ない分、私がしっかりとしないといけなかった。

 そして、アルベールはコレクションの準備と撮影で時間が取れなかった。アルベールの時間がある時は私が仕事で、私に時間がある時はアルベールが仕事だった。お互いの仕事が忙しすぎた。このままではアルベールに会うことはなく日本に帰らないといけないかもしれないと思っていた。

 電話とメールだけのやり取りが今の私とアルベールと繋いでいた。
 ここまで会うことが出来ないとなるとあの日のアルベールの言葉を思い出す。

『一緒に暮らす』ということを私は少しだけ考え始めていた。日本から戻ったら、話し合わないといけない。

 そして、私が日本に行く前日の夜になっていた。

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