君をひたすら傷つけて
好きだから一緒に居たいと思うのは…私の素直な気持ち。でも、アルベールを傷つけたくなかった。

 アルベールが迎えに来たのは十分くらいしてからだった。私がチャイムと共にドアを開けると綺麗なブルーのシャツを着て、それにも負けないくらいに爽やかな微笑みを浮かべるアルベールの姿が目に映った。

 何度も会っているのに、ドキッとしてしまう。

 少しの会えない時間が私の中の気持ちを緩やかに動かしている気がした。でも、そんな気持ちを私は上手く言葉にも態度に表すことが出来なかった。ぎこちなく笑う私をアルベールはどう思うのだろう。

「迎えに来たよ」

 私は言葉に誘われるようにアルベールの腕の中に自然に抱きついていた。一瞬、アルベールは身体を固くしたけど、私をきゅっと抱き寄せてくれて優しい温もりが伝わってくる。

「雅。どうしたの?」
「ちょっと甘えたいだけ。ダメ?」
「大歓迎。雅を甘やかせるのは俺の仕事だしね」

 そんな甘い言葉と一緒に軽く重ねた唇の熱さに胸がキュッとなる。

「じゃあ、行こうか?食事はしたの?」
「仕事の合間にサンドイッチを口には入れたけど」

「俺はまだだから、少しだけ何か作るからそれでいい?食べれるだけでいいから、付き合って」
「楽しみ。何を作ってくれるの?」

「時間もないから凝ったものは作らないけど期待して。料理は好きなんだ。雅と一緒にドリアを作ってから、料理に目覚めた」

「期待している」

「期待していいよ。結構、今は自炊しているから。で、雅の荷物はこれだけ?」

「大きなスーツケースは日本に送っているの。だから、着替えくらいしか荷物はないの」

「それなら行こうか。そうだよな。すぐに雅は帰ってくるから、大きな荷物はいらないよな」

 私のアパルトマンの前に行くと、そこにはピカピカに磨かれたアルベールの車が駐車されていた。
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