君をひたすら傷つけて
 アルベールの部屋は初めて来た時と同じように綺麗だったが、どことなくその時より生活感を感じさせた。

「散らかっているところもあるけど、見逃して」

「そんなことないわ。とっても綺麗」

「この頃忙しくて、掃除も行き届いてないからね」

「それでも綺麗よ」

 コレクションに撮影にと忙しい時間を過ごしているのに身の回りはいつも綺麗で、アルベールの性格を表している。でも、私はこの前のように磨き上げられた部屋よりも今の方が好きかもしれない。ソファに置かれたシャツをアルベールは拾い、寝室の方に持っていくのを見ながらそんなことを思った。


「雅。今から作るまでの間、先にシャワーを浴びてくる?それとも食事が終わった後にする?」

「アルベールと一緒に作ってからにする」

「じゃあ、一緒に作ろうか?と言ってもパスタとサラダくらいだけどいい?」

「そんなに食べれないし」

 キッチンで並んで、パスタを茹でたり、ソースを作ったり、野菜を切ったりと一緒に並んで作るのは楽しい。二人ですればすぐに出来てしまうものだけど、並んで一緒に過ごすのは嬉しいと思った。

 アルベールは健康に気を使っているからか、自分で料理をする。その包丁さばきは中々のものだった。盛り付け方も綺麗で普段の私が作るよりも美味しそうに見えるのが不思議だった。盛り付けはセンスなのだろう。

 テーブルに並ぶのはパスタとサラダ、そして、何種類かのチーズとワインだった。
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