君をひたすら傷つけて
第七章

エマと新しいオフィス

目が覚めたのは朝の光がカーテン越しに差し込んできて、部屋の中をゆっくりと白く染めだしたからだった。私は一瞬自分がどこにいるのか分からなかったが、すぐにここが今回のために借りているマンションの一室だと思い出した。

 目覚まし時計の音が鳴る前に私は起きることが出来たのはどこか緊張しているからだろう。ベッドから身体を起こすとフッと息を吐いた。

 時間は六時半。起きるにはいい時間だった。昨日はお兄ちゃんにマンションの下まで送って貰って軽くシャワーを浴びてからすぐにベッドに潜り込んだ。そして、気付けば朝になっていた。

 今日はリズの代わりにエマさんに会う。午前十一時に私はエマさんとリズの共同経営のために借りた新しいオフィスに行き、エマさんと打ち合わせの後、午後からは会社設立の専門のスタッフを介しての打ち合わせ。それが終わったら、これからのスケジューリングをすることになるだろう。

 私は持ってきたスーツケースの中から普段は全く袖を通すことのない紺のスーツを取り出し、ベッドの上に置いた。就職活動ではないからブラウスは水色のものにした。少しだけ華やかさを足したシフォンのもので柔らかい生地で肌なじみがいいから気に入っている。

 登記に関する専門のスタッフに会うからビジネスを意識したスーツを着る。リズなら絶対にこんな格好はしないだろうけど、ここは日本で会社設立と登記となると、華美な衣装もアクセサリーも必要ないと思った。
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