君をひたすら傷つけて
優しくて思いやりのある人。
 頭が良く仕事ができる人。

 一緒にいると安心してしまう人。
 傍に居て欲しいと思う人。

 私の幸せを考えてくれる人。

 そんなことを考えていたら、リズの温もりに包まれ、私はゆっくりと眠りの奥に落ちて行っていた。リズの温もりは私の涙を優しく拭ってくれていた。今日のこのタイミングでリズが来てくれたことに本当に感謝した。

「お兄ちゃんが篠崎海のニューヨークでのCM撮影のスタイリストを頼みたいって」

「凄い話ね」

「篠崎さんの友達の映像作家の橘聖さんが撮るらしいわ」

「聖が撮るの?それは面白いことになりそう。彼はとっても素敵な男よ」

「知ってるの?」

「もちろん。私がフランスに行く前はニューヨークで仕事をしていたの。エマはその時からの友達よ。で、私もエマも橘聖のことは良く知っているわ。忙しくなるわね」

 リズが来たとなるとこれから忙しくなる。私は今の仕事を引き継ぎ、フランスに帰る準備を始めないといけない。アルベールの待ってくれているフランスに帰ったらこの寂しさも無くなってしまうだろう。フランスに行っていた時、お兄ちゃんに会えなくても頑張れた。だから、フランスに帰りさえすれば、大丈夫だと。

 そう自分に言い聞かせた。

「おやすみ。雅。起きたら戦闘開始よ」

 私はリズの眠そうな声に頷いた。
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