君をひたすら傷つけて
リズが新しい会社に行くのは初めてだった。
 
 リズと一緒に事務所に行くと既にエマとまりえが来ていて、エマはパソコンの前で眉間に皺を寄せていて、その横でまりえはコーヒーを淹れていた。まりえは私と一緒に入ってきたリズを見て、目を丸くしていた。

「いつ来たの?」
「昨日の夜に着いたの」
「エマから何も聞いてないわ」

「まりえを驚かせたくて。エマには内緒にして貰ったの。ディーのコレクションが盛況だったので会場を急遽増やしたりした。でも、最高によかったわ。これからディーのコレクションがある時はフランスだけでなく、ヨーロッパの他の地域、アメリカそして日本でもスタイリストとして参加できるようになった」

「凄いわ。これでこの会社にも弾みがつくわね」

 リズとエマの会社は別ではあるけど仕事は一緒にしていくようで、欧州をリズが中心で、アメリカ、日本などをエマが担当することになっていた。私は欧州担当で、日本の担当はまりえがすることになりそうだ。まりえはスタイリングは出来ないけど、それ以外の実務は何でも出来るのでバランスはいいと思う。

「それと凄い話があるの。俳優篠崎海の新CMのスタイリングの仕事が来てる。雅を通して打診があったわ。勿論、受けるわよね」

「当たり前じゃない。そんな凄い仕事。じゃ、担当はリズと雅でいいかしら。私は別の仕事があるし」
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