君をひたすら傷つけて
「高取さんはリズにって。私はフランスに帰ります」

 私の生活の拠点はフランスにある。いくらリズが日本に来ているとはいえ、それなりにフランスには仕事がある。イタリアでの仕事はリズでフランスでの仕事は私が中心にしていた。その上にニューヨークの仕事となると荷が重い。

 それにアルベールにも会いたい。

「この仕事はリズと一緒に雅にお願いしたい。理由はリズ一人で周りが全部知らない人となると大変でしょ。リズの事だから、雅がフランスに帰って困らないように仕事をスケジュールを管理しているでしょ」

「雅はフランスに戻って貰う。雅に来て貰ったのは登記のことがあって、書類の不備が会った時に困るからお願いして来て貰ったの。そんなに簡単に雅をニューヨークには行かせられない。それに向こうの撮影スタッフに知り合いがいるから大丈夫」

「一人でニューヨークには行かせられない。ニューヨークに慣れているとはいえ、今回の仕事を失敗できない。それならこの仕事は断る。日本で初めたばかりで失敗することで躓くわけにはいかない」

 リズが私をフランスに帰そうとしてくれている理由も分かる。そして、エマがニューヨークにリズを一人で行かせたくない理由もあるようだった。

「じゃ、私がリズと一緒に行けばいい?」

 そう言ったのはまりえだった。

「何言っているの?」
「旦那が許すはずないでしょ」

「大丈夫。リズを一人で行かせるくらいなら私が一緒に行く」
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