君をひたすら傷つけて
「雅。ただ今。会いたかったよ」

「私も会いたかった。でも、今は聞きたいことがあるの。今日、アドリエンヌという女性が来たわ。とっても綺麗な人でアルベールの従姉妹で許嫁と自分で言っていたわ。そして、アルベールが初恋で愛しているって言ってた。」

 アルベールは私を抱きしめていた腕の力を緩めると驚いたような顔を見せた。そして、眉間に皺を寄せ、怒りを露わにしていた。

「ここになんでアドリエンヌが…。許嫁のことはずっと前に親が勝手に決めたことで俺は雅と付き合いだしてから、婚約のことは断っている。雅がいるのに、そんなことするわけないだろ」

「私もアルベールのいうことを信じている。でも、アドリエンヌさんの言っているのも嘘とは思えなかった。アドリエンヌさんには愛人になるつもりならいいと言われたわ」

「アドリエンヌ……。なんてことを雅に言うんだ。言っていいことと悪いことの違いも分からないのか。雅、俺が愛しているのは雅だけだよ。アドリエンヌと結婚するつもりもない。幼い頃から知っているアドリエンヌは妹のようにしか思えない。俺が結婚したいのは雅だけだ。信じて欲しい」

「アルベールは財閥の後継者なの?」


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