君をひたすら傷つけて
 橘さんが部屋から出ていき、その後にリズが続いた。そして、部屋に残されたのは篠崎さんとお兄ちゃんと私の三人だった。篠崎さんはオンオフがハッキリとした人で、さっきまでのミーティングは仕事で、二人が出て行った瞬間オフになった。

 そのオフの雰囲気は周りを和ませる。

「雅さんは日本に戻ったらどうするの?」

「エマのオフィスで残務整理が終わった時点でフランスに戻ります。リズの欧州での仕事の手伝いが私の仕事ですので」

 日本に戻ったら、残務整理をした後にフランスに戻るつもりだった。アルベールとのこともあるし、色々と棚に上げている問題もある。私はフランスに戻ったらアルベールとこれからの人生について真剣に話し合おうと思っていた。

 そして、アルベールと一緒に幸せになりたいと思っている。アドリエンヌさんのことは気になるけど、私はアルベールの事を信じている。アドリエンヌさんが何を言おうと私はアルベールの愛を信じている。

「そうか。残念。日本に居るなら俺の専属スタイリストになって欲しかったのに。雅さんと居るとホッとするんだ。何だろ、高取と一緒に居る時みたいに安心する。芸能界って綺麗なことばかりじゃない。だから、自分の周りにいる人は全面的な信頼が置ける人がいい」
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