君をひたすら傷つけて
「雅がフランスに帰ってもエマさんの事務所とはこれからも仕事をしていくことになると思う。うちの社長の目は節穴じゃない。今回の海のCMの出来を見れば、これからも一緒に仕事をすることになるだろ。欧州に撮影で行った時は雅がスタイリストをしてくれると、海も安心して仕事に励める」

「もちろん。篠崎さんがフランスで仕事をする時は私も絶対にスタッフとして入りたい。今回、橘さんと現地スタッフの人と上手くやれるか、心配だったけど、でも、始まってみたらいい作品を作りたい人たちの集まりだった。その雰囲気はとってもよかった」

「今回はスタッフにも恵まれたし、橘聖が撮るからか、海もいい表情を向けていた。本当にいい仕事が出来ていると思う。雅……。さ、かなり時間が過ぎたな。
 もう寝た方がいい。明日はまた早い。二日しかないけど、最後の日まで一緒に頑張ろう」

「お兄ちゃんはまだ仕事?」

「そうだね。もう少し仕事しないといけないな。日本に帰った日から次の仕事が待っている。海の身体も心配だけど、こうもスケジュールが詰まるとどうしようもなくなる」

「仕事は減らせないの」

「それは海が嫌がるんだ。海は昔から自分に厳しい。あのルックスにあの性格の良さだから、クライアントに気に入られることが多く。事務所が取ってくる以外にも個別に仕事が入る。事務所もそれに関しては海に任せると言っているが、実際に海は断らない」

「そんなに仕事を受けたら身体を壊すよ」
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