君をひたすら傷つけて
「ううん。公園で多分同級生と思われる女の子が高取くんに告白していて、『藤堂さんは友達』って言ってた」

「でも、それって直接じゃないよね。雅が自分で言って『友達』と言われたのだったら、それは仕方ないし、友達を越えられるように頑張れって言う。でも、まだ自分で直接聞いたわけではないでしょ」

「じゃ、直接聞いて『友達』って言われたら?」

「友達を越えられるように頑張れって言う。だって、高取くんは二か月でまた転校するかもしれないけど、だからといってもう会えないわけではないでしょ。今のご時世電話もあるし、メールもある。お金は掛かるかもしれないけど交通手段は充実しているから行けない場所はないよ。だから、好きなら好きでいいじゃない。諦める方が可笑しいよ」

 私の中で二か月しかないということ。友達と言われたことが引っかかっていた。でも考えてみれば少し遠くに離れても会うことが出来る。時間があれば友達の壁を越えることもできるかもしれない。

「そうかな?好きでいいのかな?」

「そうそう。さ、じゃ、少しだけお洒落しよ。このグロスはツヤツヤだし、甘い桃の香りがするのよ。高取くんだって、男の子なんだから、可愛い女の子と一緒に歩きたいと思うよ」

「なんでさやかがそんなもの持っているの?」

 部活に青春を燃やしていたさやかに『桃の香りのグロス』は違和感たっぷり。

「私も女の子ですから」

 
 恥ずかしいという私との攻防でさやかは髪を少しだけピンで止めることと薄い色付きリップで許して貰った。さやかは不満そうだけど気合いを入れて行くのも恥ずかしい。


「楽しんできてね」


「だから、誕生日プレゼントを買うだけだよ」


「はいはい」

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