君をひたすら傷つけて

放課後デート

「じゃ、いいプレゼントが見つかるといいね。デート楽しんできてね」

 そういうとさやかは手を振りながら教室を出て行った。そんなさやかの姿を見送ってから私は窓のガラスに映る自分の姿を見た。髪をピンで留めただけ。色付きのリップを唇の上に乗せただけ。でも、それだけでも私にはかなりの背伸びだった。

 汗水を垂らしていた時も女子力の高かったさやかと比べて私は興味はあるけど中々踏み出せないでいた。でも、今日はいつもと違った。


「だから、デートじゃないって言っているのに」


 そんな言葉を小さく呟きながら私は高取くんから貰った紙に書かれてあるメアドを見る。少し右上がりに並ぶ綺麗な字は思ったよりも力強い。

 クラスメートのアドレスだからと言い訳しながら私の携帯に刻まれる高取くんの名前、電話番号、メアド。用件だけを伝えるだけが精一杯で、これでいいかと何度も確認してから送ったメールだったけど、送った後に後悔した。可愛い絵文字でも入れた女の子らしいメールにすればよかったと…。


『藤堂です。どこに行ったらいい?』

『講堂に向かう渡り廊下』


 メールが教えてくれたのは高取くんが待っていてくれる場所。そこは私が初めて高取くんを学校案内する時に待っていた場所だった。
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