君をひたすら傷つけて
「エマに連絡してみる」
私はエマに連絡しようと電話をしてみたけど、一向に取ってくれる気配はなかった。耳元で無機質なコール音が流れていた。フッとため息をつき、携帯の画面を撫で、出てきた名前は『まりえ』。でも、既婚者であるまりえには連絡することは出来なかった。ホテルの部屋を考えたけど……。今の時期は無理なのは分かっていた。
「出ないか?」
「うん。でも、大丈夫。ホテルに泊まるから」
「無理なのは分かっているだろ。今日から週末まで人気アイドルグループのコンサートがあり、都内のホテルは満室だよ。業界にいるなら分かるだろ」
お兄ちゃんに言われて思い出したのは、今日の夕方からのことだった。確かに道には色々なグッズを身に着けた人が楽しそうに歩いていた。全てが都内から来たわけではない。遠方からのコンサート参加の人は数か月前からホテルの部屋を抑えているはずだった。お兄ちゃんはそれを知っているのだろう。
「でも、本当にここで大丈夫だから」
「私が大丈夫じゃない。ここに雅を置いて帰れない。誰が入ったか分からない部屋に一人で置いて帰って何かあったらと思うと安心できない。行く場所が見つからないなら、私のマンションに来たらいい。4LDKで空いている部屋がある。中から鍵もかかる」
「お兄ちゃんの部屋?それは申し訳ないから、ビジネスホテルでも…探すから」
「なら、ここで行き先を決めてくれ。雅の行き先が決まったら、そこまで送ってから自分の部屋に帰る」
「わかった」
私はエマに連絡しようと電話をしてみたけど、一向に取ってくれる気配はなかった。耳元で無機質なコール音が流れていた。フッとため息をつき、携帯の画面を撫で、出てきた名前は『まりえ』。でも、既婚者であるまりえには連絡することは出来なかった。ホテルの部屋を考えたけど……。今の時期は無理なのは分かっていた。
「出ないか?」
「うん。でも、大丈夫。ホテルに泊まるから」
「無理なのは分かっているだろ。今日から週末まで人気アイドルグループのコンサートがあり、都内のホテルは満室だよ。業界にいるなら分かるだろ」
お兄ちゃんに言われて思い出したのは、今日の夕方からのことだった。確かに道には色々なグッズを身に着けた人が楽しそうに歩いていた。全てが都内から来たわけではない。遠方からのコンサート参加の人は数か月前からホテルの部屋を抑えているはずだった。お兄ちゃんはそれを知っているのだろう。
「でも、本当にここで大丈夫だから」
「私が大丈夫じゃない。ここに雅を置いて帰れない。誰が入ったか分からない部屋に一人で置いて帰って何かあったらと思うと安心できない。行く場所が見つからないなら、私のマンションに来たらいい。4LDKで空いている部屋がある。中から鍵もかかる」
「お兄ちゃんの部屋?それは申し訳ないから、ビジネスホテルでも…探すから」
「なら、ここで行き先を決めてくれ。雅の行き先が決まったら、そこまで送ってから自分の部屋に帰る」
「わかった」