君をひたすら傷つけて
　荷造りをしながら、お兄ちゃんも携帯でいくつかのホテルを探してくれたけど、どこも同じような状況だった。部屋はあったとしても、スイートルームなどの高級な部屋ばかりで一日くらいは泊まれたとしても数日泊まるのは無理だろう。

　一番いいのは、数日の間、ホテルで過ごして、その後は新しいマンションに引っ越しをすることだった。でも、今のマンションよりもセキュリティがしっかりしている場所でないと、こういうことはいつでも起こりうることだと思う。

　そうなると、ホテル暮らしはもっと長くなる。今となっては、事務所から近くて、安価なだけで選んだマンションに後悔していた。もう少し高層階を選んでいれば、こんなことにはならなかったかもしれない。

「雅。今日は時間もだし、ホテルの部屋を探すのは無理だと思う。明日になれば事務所に行って、雅に会うマンションを紹介して貰えるように色々と連絡してみる。だから、今日だけ、私の部屋で我慢してくれないか？」

　そこまで言われると断れなかった。そして、お兄ちゃんに甘えることにした。

「今晩だけお願いします」

「ああ。じゃ、荷物が準備出来たら行こう。引っ越し先が決まってから、後の荷物を運べばいいし」

　後、数時間で夜も明ける。

　朝までお兄ちゃんの部屋にお世話になって、それから、エマの事務所に行って、新しいマンションを探そう。マンションが見つかるまでは、エマの事務所のソファに寝泊まりをしてもいいし、ネットカフェでもいい。

　とりあえず、今晩だけは乗り切ろうと思った。
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