君をひたすら傷つけて
「私って天才ね。これで篠崎くんも満足だと思うわ」

「可笑しくないですか?」

「全然。とっても可愛いと思うわ。さ、そろそろ行かないと篠崎くんを待たせすぎるわ」

 自画自賛だと思うけど、里桜ちゃんは本当に可愛かった。自信なさげな雰囲気も支えてあげたいと女の私でも本気に思うほどだった。心配しないでも十分に可愛いし、どこにでもいるような女の子がメイクと服でこんなにも変わると、スタイリストとしては感無量だった。

 私の少し後ろを歩く里桜ちゃんは緊張しているのが背中から感じる。でも、私は敢えてそのことを気づかない振りをすることにした。妙に気遣って、里桜ちゃんが怖がっても困る。

 私の仕事はこの部屋から最上階のレストランに送り届けること。その最後のミッションに入っていた。里桜ちゃんを緊張させすぎないように、少し明るい声を出すように心がけ、大丈夫だと言葉以外に伝わるようにする。

 それは里桜ちゃんのためであり、篠崎さんのためであり、篠崎さんを大事に思ってるお兄ちゃんのためだった。私に出来ることは本当に少ないけど、この今から幸せに向かって歩いていく二人を大事にしてあげたいと、少しでもお手伝い出来ればと本気で思った。

 一緒に部屋を出て、向かうのはこのホテルの最上階にあるレストランだった。最上階で最高級のレストランで篠崎さんはきっと首を長くして待っていると思う。いきなりの展開で驚いたけど、少しでも楽しく過ごして欲しいと思う。そして、スタイリストとしては里桜ちゃんは本当に可愛くメイク出来たと思うから、篠崎さんとお兄ちゃんの反応が楽しみだった。

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