君をひたすら傷つけて
 二人でエレベーターに乗って一気にロビーに向かって降りていく。そんな中、お兄ちゃんがフッと息を吐いた。さすがのお兄ちゃんも疲れたのだろう。怒涛の一日を過ごしたお兄ちゃんも顔に疲れが滲んでいた。

「雅もお腹空いたろ。でも、里桜さんの荷物を整理してからでいいか?さっき、電話が入って、もう少ししたら海の部屋に荷物が届く」

「大丈夫。でも、昨日の今日でいきなりよね」

「あの、海は本気で里桜さんが好きになったみたいだな。家具とか服とか全部準備したのは明日から里桜さんが困らないようにだけど、自分が明日からロケだというのも半分は忘れている気がする。大事な撮影だから頑張って欲しいとは思うが、どうも今は里桜さんのことでいっぱいらしい。マネージャーの俺はいいが、雅は付き合わせて悪いと思っている。でも、どう考えても、女性の服を触るのは女性の方がいいから、手伝って貰えたら助かる」

「お腹は大丈夫。でも、終わったら美味しいものを食べに連れて行って」

「もちろん。最上階のレストランでもいいぞ」

「ううん。近くの居酒屋でいい。出来ればお刺身が美味しい店がいい」

「わかった。期待していいよ。よ先日、接待で使った店が本当に美味しかったから、雅を連れていきたいと思っていた店がある。そこでいいか」

「うん。頑張れる。お兄ちゃんの美味しいは本当に美味しいから、本当に楽しみ。さ、荷物を頑張って片付けないとね」

「居酒屋じゃ、割に合わないだろうが、また、時間がある時に埋め合わせするから、今日は頑張ってくれ」

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