君をひたすら傷つけて
「まあそれでもいいわ。
 さ、仕事、仕事。雅。エマからの伝言よ。今回の映画の仕事はいつも以上に気合を入れて欲しいとのことよ。藤堂雅がスタイリストとしての地位を確実なものにしてくるようにですって。それと、明日は一日休んで京都まで移動するようにって。水曜日に移動するよりも一日早い方が心象がいいからって」

「ホテルは?撮影場所の近くにしてくれた?」

「その件は私から高取さんに連絡しているから、大丈夫だと思う。空港で高取さんに連絡して、彼の指示に従って」

 一日早く行くのはこっちの勝手なのに、お兄ちゃんを動かしてしまった。

「高取さんは何て?」

「早くきてくれるのは助かるって。どうも篠崎さんだけでなく、雅が良ければ、数人のスタイリングも頼みたいってエマに連絡してきた。エマの返事は雅の想像通りよ」

「二つ返事ね」

「その通り。で、撮影が終わったら、リズが日本でのコレクションを手伝って欲しいって。ディーが来日してコレクションをするけど、その全てのスタイリングをリズが仕切ることになったの


 エマは仕事に貪欲で、一つの仕事から次の仕事を引き連れてくる。そんな中で私だけでなく、まりえも大忙しだった。そして、忘れていけないのがリズだった。


「映画の撮影が終わったら、コレクション。死ぬかも」

「大丈夫。雅よりも働いているエマとリズが死んでないから」


 リズはふらっと日本にやってきて、ドカンと仕事を落としていく。エマとリズのせいで私のスケジュール帳は真っ黒になるほど色々と書き込まれている。忙しいと思うけど、私以上にエマもリズもタフだから泣き言は言えなかった。
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