君をひたすら傷つけて
 雅人の言った通り、メニューを見ると女の子が好きそうなものが並んでいる。雅人は私の方にメニューを向けるとニッコリと笑った。

「なんかこうしていると大学のサークルの飲み会を思い出すな。雅は途中でフランスに行ったから、あんまり飲み会には参加してないけど、雅のことはよく覚えているよ。スーツ姿の彼氏が迎えに来たし」

 そんなこともあったと思いだす。

 いきなり誘われて、お兄ちゃんを電話で迎えに来てもらって……。

「そうね。しずか先輩やレンジ先輩は元気かなって思う。私がフランスに行ってから全く連絡をしてないの。でも、あの二人が居たから、サークル内は苗字ではなくて、名前で呼ぶようになったのよね」

「そういえば、しずか先輩結婚したよ。レンジ先輩と」

「え?」

「しずか先輩のドレス。俺が作ったんだよ」

 そういうと、雅人は自分の携帯の写真を見せてくれた。あの頃は派手だったレンジ先輩は髪も黒くなり、穏やかな微笑みを浮かべ、あの頃のままの綺麗なしずか先輩の隣にいる。懐かしい笑顔を見ながら時間が過ぎたのを感じた。

「雅人が??」

「うん。俺が日本に戻ってきて、一番初めての仕事だった。いきなりレンジ先輩から電話が来て、出来上がるまではサプライズって、しずか先輩の出来るだけ身体にフィットしたワンピース一枚を持ってきた。結構、苦労しながら、そのワンピースをトルソーに着せて、ドレスを作ったよ。仮縫いまではもう冷や冷やで焦っていた。
 で、それから何となく、ウェディングドレスのデザインばかりをしている。大学の同級生からの依頼も多くて……。今考えると、レンジ先輩としずか先輩の結婚式で宣伝させてもらった感じだよ」
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