君をひたすら傷つけて
「二人は今は?」

「二人とも元気だよ。たまにサークルの集まりもある。今度、雅も来たらいいよ。レンジ先輩としずか先輩も喜ぶと思うよ。この前、撮影のスタジオで雅に会ったことをしずか先輩に連絡したら、しずか先輩も会いたいって言っていたよ」

「そうね。時間があれば、参加してみようかな。それも楽しそう」

「その時は連絡するよ。さ、とりあえずビールでも飲みながら、例の件を話そうか。電話でチラッと聞いただけだと正直、厳しいと思った」

「うん。この間、彼が結婚したのは知っているよね。で、式を挙げるのにドレスをオーダーしたいの。でも、期間が一か月くらいしかないから、普通のところには頼めなくて」

 結婚式もイタリアでの映画祭の後に行うくらいだから、普通のカップルのように長々とハネムーンもないし、豪華な披露宴もない。そんな限られた中で篠崎さんが里桜ちゃんのために考えたのがウェディングドレスのオーダーだった。

「一か月となると、正直、断る。でも、雅が頼んで来たから、断りにくいな。で、その相手はどんな子なの?一般人だったよね」

「本当に普通の女の子だけど、素直で可愛いの。守ってあげたいような女の子だけど、芯は強くてしっかりしている」

「そうか。うーん。でも、アトリエに篠崎海が来るとなると正直、スタッフが使い物にならないから、雅が手伝うならいいよ。スタイリストだろ。その子のドレスの着付けから、メイク、ヘアセットまでを雅がするならいい」

 
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