君をひたすら傷つけて
 自分の部屋に戻ると、私はとりあえず里桜ちゃんのご両親の部屋に行ったが、まだ、レストランでの食事の最中だったみたいで、部屋は留守だった。私はフロントに行くと、里桜ちゃんのご両親宛にコメントを残すと、それを食事が終わった時間を見計らって、渡して欲しいと頼んだ。

 里桜ちゃんは無事に搭乗したこと。
 ミラノでは信頼の置ける人が里桜ちゃんを映画祭の会場まで送り届けるということ。
 私は空港で旧知の友人に会ったので、一度ホテルに戻ったけど、そのまま一緒に食事に行くこと。

 また、明日の朝にこれからのことを話に行くので、今日はゆっくり休んでもらうようにとのコメントを残した。そして、私は自分の部屋には戻らず、アルベールの部屋に向かおうとした。ちょうどその時、お兄ちゃんから連絡が入った。

『里桜さんが無事にミラノに到着した。リズも映画祭に呼ばれていたらしく、里桜さんのことは大丈夫だと思う。色々とありがとう』

 私はアルベールに再会したことをお兄ちゃんに連絡しようかと思った。でも映画祭のことで忙しいお兄ちゃんに連絡する必要もないだろうと思い、私は自分の部屋を出て、アルベールの部屋に向かった。

 アルベールの部屋に行くのをやはり躊躇したけど、行くことにしたのは、モデルを辞めて、事業を引き継いだアルベールのことが気になっていたからかもしれない。好きとか嫌いとかではなく、畑違いの場所で頑張る友人のことを知りたいと思ったからだった。
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