君をひたすら傷つけて
「雅。これからも篠崎海のスタイリストをしていくの?」

 日本で仕事をするからには篠崎さんのスタイリストは私の仕事の中心になってはいる。でも、それ以外にもエマの事務所はたくさんの仕事があり、エマと私で仕事を捌いている。

「そのつもりよ。エマの事務所と篠崎さんの事務所とが専属契約をしているから。仕事はそれだけじゃないけど」

「そう。高取さんとは?一緒にいるの?」

「今、一緒に住んでいるわ。前に住んでいたアパートのセキュリティに問題があって、高取さんのマンションの一室に間借りしているの」

「そう。特に何か関係があるわけではないってこと?」

「大家さんとその部屋を借りている人って関係よ」

「なら、俺が日本にマンションの一室を借りたら、雅はそこに住める?」

「え?どういう意味?」

「言葉の通りだよ。日本の、雅の都合のいい場所にマンションを買う。だから、雅にはそこに住んで欲しい。セキュリティの厳しいマンションを選ぶから」

 アルベールの言っている意味が分からなかった。

「なんで日本のマンション?」

「彼の部屋に雅に住んで欲しくないからだよ。雅。もう一度、俺とのことを考えて貰えないだろうか。あの時は、自分の置かれた立場、雅の仕事のことを考えると、一緒にいることは難しかった。でも、今なら、一族のことも抑えることは出来る。雅はずっと日本に住んで仕事もしていいし、離れて住むことになるとは思うけど……。今も雅を愛している」
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