君をひたすら傷つけて
 そして、私は気づいた。

 私が望んだ夢のような状況が目の前に繰り広げられ、私は胸を詰まらせたのだ。

 私は義哉との未来を望んだ。先がないと分かっていて、心では分かっているのに、希望のような夢を抱いた。自分の大好きな人に囲まれて、世界で一番好きな人と結婚する。そんな儚い夢を心に抱いた。そして、その夢のような情景が目の前で繰り広げられている。

 いつか夢のような奇跡が起きて、義哉の病気が治り、今の篠崎さんと里桜ちゃんのように一緒に歩きたいと思った。

 好きで、好きで堪らなかった。短い時間しか残されてなかった恋だった。最初から、終わりがあるかもしれない恋だった。でも、私は永遠を心から望んだ。

 静かに始まった結婚式は私が心から望んだ夢のようなものだった。もう叶えられない夢のような結婚式を目の当たりにして、私は揺れていた。
 
 篠崎さんの親族席の一番前に、お兄ちゃんが座り、その後ろに橘さんと叶くんとエミリア・パール。その後ろが私とリズだった。最初、お兄ちゃんの横に座るように言われたけど、私はリズの横に座った。

「高取さんの横でなくていいの?」

「うん」

「大丈夫?」

「大丈夫よ」

 厳かな雰囲気で始まった式は静かに始まり、順調に進んでいく。決まりきったありふれた式の進行なのに…。胸の奥が苦しさで詰まっていく。

 健やかなるときも病める時も喜びの時も、悲しみの時も、富める時も貧しき時も……。

 誓いの言葉をお互いに交わし、指輪の交換をする。結婚証明書にサインをして、神父様が参列者に見せて、微笑んだ。

「神の前にこの二人を夫婦であることを宣言します。この二人の結婚に意義があるものは今、名乗りなさい。なければ誓いの口づけを……」

 篠崎さんは里桜ちゃんのベールをゆっくりと上げ、誓いの口づけをした。
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