君をひたすら傷つけて
 その幸せそうな姿を見ていて、私は頬に涙を伝わせていた。幸せになって欲しいと思った。今も篠崎さんと里桜ちゃんは幸せだと思う。でも、もっともっと幸せになって欲しいと思った。

「雅。大丈夫?」

「ん」

「篠崎さんと里桜さんの結婚式、感動するわね。幸せになって欲しいと心から思うわ」

「ん」

「そんなに泣かないの」

 横で涙を流す私を見て、リズはバッグから取り出したハンカチで私の涙を拭ってくれる。ハンカチを手渡し、私の左手をきゅっと握った。その手は大きくてとっても温かった。その手の温かさが大丈夫と言ってくれているように感じ、私の涙腺をもっと緩ませた。

 ハンカチに吸い取られる涙は、二人のこれからを祝福する気持ち、愛し愛される人と一緒にいることが出来るということへの少しの羨望。色々な気持ちは入り混じり、私はずっと涙を止めることが出来なかった。

 篠崎さんと里桜ちゃんが教会を出ると、フッと空気が緩むのを感じた。そして、フッと天井を見上げた。色々な思いが交差し、私を揺さぶる。

 今から、結婚式の出席者は結婚パーティの会場に移動することになっている。その間に篠崎さんと里桜ちゃんは教会内で写真撮影をすることになっていた。私はその撮影の為に化粧直しに行かないといけない。でも、今は動けそうになかった。

「高取さん。雅のことよろしく。私は今から、里桜さんの撮影の手伝いに行ってくるから」
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