君をひたすら傷つけて
「センター試験頑張ってください」

「ありがとうございます」


 それだけ言うと高取くんのお兄さんは私が今出てきた病院の方に入っていく。高取くんの病室に行くようになって、何度かすれ違うことはあっても、こんな風に話したことはなかった。初めて会った時に比べたら高取くんのお兄さんは優しい人だと感じることが多くなっていた。特に話さなけど、すれ違う時にとっても優しい微笑みを向けてくる。

 話はきっと高取くんのこと。センター試験が終わったら連絡しようと思った。


 センター試験の朝、私の携帯には高取くんからのメールが届いていた。

『今まで頑張ってきたのだから大丈夫だよ。いつも通りにね』

 たったこれだけの短いメールだったけど、それで十分だった。いつもの実力以上は出せないと分かっている。でも、少しでも足掻きたい。特に教えてくれていて数学は頑張りたい。

『頑張ってくる』


 高取くんのメールに励まされて私はセンター試験に挑んだ。励ましの甲斐があってか、センター試験は自分でも思っていたよりもよく出来たと思う。特に数学は高取くんが教えてくくれたのと似たような問題が出て、もちろん解けた。

 気持ちが落ち着いていたからかセンター試験終わった後、私は自分の中で納得出来ていた。


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