君をひたすら傷つけて
 長いキスだった。

 身体がぐずぐずになるような気がする。ずっと気を張っていたわけでもないのに、プツンと何かが切れたような気がした。それは私の理性なのか、私とお兄ちゃんの大事な関係なのか、それとも何か他の物なのか?今はそれも分からない。

 ただ分かるのは、この腕に包まれると幸せな気持ちに包まれ、

 ただ、甘いキスに酔い痴れる。

 胸の奥底から温かいものが広がっていくのを感じ、でも、このキス自体を私は嬉しいと思いつつも、失うものの大きさに慄く。揺れる心を止めることは出来なかった。

 あの晩、お兄ちゃんとの大事な関係を崩したのは私で、遺伝子が欲しいとお兄ちゃんに我儘を言ったのも私だった。感情の高ぶりをあの夜は抑えることが出来なかった。人の幸せを望み、そして、自分も幸せになりたいと思った。

 アルベールとの恋があんなにアッサリと終わらせられることに私は驚いた。客観的に見てアルベールは理想の恋人だった。優しく強く、そして、美しい。でも、そんなどの基準も私の本当の恋の前には脆く崩れ去る。あんなに好きだと思ったし、大事にしたいとも思った。

 彼を好きになったのは嘘じゃない。でも、それは一つの恋ではあったけど、永遠に続くものではなかった。私は堕ちるほどの恋を出来なかった。自分を雁字搦めに縛り付けるのは誰でもなく、私なのに……。

 不器用でそのまま動けなくなる。

 初めての恋の余韻は今も胸の奥に欠片が残っていて……。そして、その恋の欠片がお兄ちゃんを傷つけた。

 
< 937 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop