君をひたすら傷つけて
「雅が大学を休学して留学するということで、一番最初の感情は心配だった。でも、その次に浮かんだ言葉は雅が帰ってくるのを待つ自分がいた。雅は語学留学を通して、色々な人と出会い、成長していく。義哉とのことを乗り越え、前に進みだした。俺にも篠崎海という心血を注げる俳優に出会った。仕事は順調で、何も憂うことはなかった。良かったと思った。でも、ふとした瞬間に雅のことを思いだす。
雅のことが胸の奥から離れなかった。でも、それは妹のような存在に対する思いだと思っていたけど、雅がアルベール・シュヴァリエとの話を耳にしてから、どうしても雅に会いたくなってフランスに行った」
あの時、お兄ちゃんがフランスに来たのは、仕事のついでではなく、私に会いたくて……。
「アルベール・シュヴァリエは文句のないほどの男だから、雅さえ幸せになってくれるなら、彼とでも幸せになって欲しいと思った。これも嘘じゃない。でも、フィレンツェでで雅を抱いて、もう無理だと思った。義哉のこともアルベールのことも分かっている。今、仕事を一生懸命していることも分かっている。ただ、傍で見守るのはツラい。好きだから、愛しているから……」
お兄ちゃんは私の身体を抱き起こし、ベッドに座らせると、横にある引き出しから、小さな箱を取り出し、私に差し出した。
この状況でこの箱の中に何が入っているのか、分からないほど子どもではない。
「ごめんなさい」
私はそう呟きながら、身体が強張るのを感じていた。
雅のことが胸の奥から離れなかった。でも、それは妹のような存在に対する思いだと思っていたけど、雅がアルベール・シュヴァリエとの話を耳にしてから、どうしても雅に会いたくなってフランスに行った」
あの時、お兄ちゃんがフランスに来たのは、仕事のついでではなく、私に会いたくて……。
「アルベール・シュヴァリエは文句のないほどの男だから、雅さえ幸せになってくれるなら、彼とでも幸せになって欲しいと思った。これも嘘じゃない。でも、フィレンツェでで雅を抱いて、もう無理だと思った。義哉のこともアルベールのことも分かっている。今、仕事を一生懸命していることも分かっている。ただ、傍で見守るのはツラい。好きだから、愛しているから……」
お兄ちゃんは私の身体を抱き起こし、ベッドに座らせると、横にある引き出しから、小さな箱を取り出し、私に差し出した。
この状況でこの箱の中に何が入っているのか、分からないほど子どもではない。
「ごめんなさい」
私はそう呟きながら、身体が強張るのを感じていた。