君をひたすら傷つけて
 自分の招いたことなのに、私はお兄ちゃんを受け入れることが出来なかった。愛されていると感じ、私も愛しているとは思う。自分を許せたら、また恋を、愛することを出来るのだろうか。

 上手に恋の出来ない私はどこか壊れているのかもしれない。

 仕事も出来て、篠崎さんほどではないけど、お兄ちゃんは端正な顔立ちをしている。優しいし、思いやりもあるから、私じゃなくてもお兄ちゃんならいくらでも素敵な人と出会うことは出来ると思う。

 今だって、篠崎さんの敏腕マネージャーとして名前は知れているし、篠崎さんを抜きにしてもお兄ちゃんに近づきたくて、近づけない綺麗な人が何人もいること私は知っている。芸能プロダクションのマネージャーなのに、綺麗な女優やアナウンサーもお兄ちゃんと仕事以上の好意をみせながら話している。

 もちろん、私もお兄ちゃんのことは好き。
 でも、その好きが分からない。考えれば考えるだけ分からなくなる。

 手を伸ばせば、幸せになれる。
 そんなこと分かっているのに……。心が痛くなるくらいに思っているのに、それでも私は自分の気持ちが分からないままにお兄ちゃんの腕に飛び込むことは出来なかった。大事な人だから、自分の気持ちを決めないと動けなかった。

 恋と愛は違う。そして、愛にも色々な種類がある。

「謝る必要ないよ。雅の気持ちは分かった。ここに連れてきたのは俺だけど、申し訳ないが少しでいいから一人にしてくれるか?」

「うん。わかった」
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