君をひたすら傷つけて
まりえの旦那さんが海外出張の間、私は居候しているのだけど、それに今はリズもマンションによく泊まりにくる。パリのアパルトマンで一緒に過ごしていた時のように穏やかな毎日が訪れていた。
「でも、今は行けない」
「今行かなくてどうするの。そろそろ色々と考えないといけないでしょ。高取さんとじゃないなら、リズと育てる?」
私の体調不良の原因は……疲れかと思っていたけど、妊娠していたからだった。微熱が続き、どうも可笑しいと思いだして、生理も遅れていたから、産婦人科に行ったら、妊娠していることが分かった。たった一夜の夢だと思っていたのに、私の身体は命を宿していた。
お腹にいるのはお兄ちゃんの子どもで、あのイタリアでの夜に出来た子どもだった。産婦人科でお腹の中のエコーを見せて貰い、私の子宮の中には小さな袋があり、その中に小さな命があった。その写真を大事に持って帰るとまりえに見せると穏やかに微笑み抱き寄せてくれ、そして、妊娠を知ったリズは仕事を早々に終わらせ、まりえのマンションに帰ってくると私を抱き寄せる。そして、背中を摩りながら、『おめでとう』と何度も繰り返した。
二人に喜んで貰うと次第に実感してきて、これからいろいろと考えないといけないのに、嬉しさの方が心を覆う。
産むことを迷うことはなかった。産みたいと心から思った。
今、私たちの中での問題は産むのは前提として、誰を父親にするかだった。
「でも、今は行けない」
「今行かなくてどうするの。そろそろ色々と考えないといけないでしょ。高取さんとじゃないなら、リズと育てる?」
私の体調不良の原因は……疲れかと思っていたけど、妊娠していたからだった。微熱が続き、どうも可笑しいと思いだして、生理も遅れていたから、産婦人科に行ったら、妊娠していることが分かった。たった一夜の夢だと思っていたのに、私の身体は命を宿していた。
お腹にいるのはお兄ちゃんの子どもで、あのイタリアでの夜に出来た子どもだった。産婦人科でお腹の中のエコーを見せて貰い、私の子宮の中には小さな袋があり、その中に小さな命があった。その写真を大事に持って帰るとまりえに見せると穏やかに微笑み抱き寄せてくれ、そして、妊娠を知ったリズは仕事を早々に終わらせ、まりえのマンションに帰ってくると私を抱き寄せる。そして、背中を摩りながら、『おめでとう』と何度も繰り返した。
二人に喜んで貰うと次第に実感してきて、これからいろいろと考えないといけないのに、嬉しさの方が心を覆う。
産むことを迷うことはなかった。産みたいと心から思った。
今、私たちの中での問題は産むのは前提として、誰を父親にするかだった。