君をひたすら傷つけて
 息切れをすることが増え、味覚が変わったのか、妙に喉が渇く。一般的にあるような悪阻の酷い症状はないけど、それでも、身体は疲れやすくなっていた。そして、感情の振れが大きく、たまに泣きたくなる。妊娠初期の状況が私の身体にも起きていた。

 そんな私はリズとまりえに支えられながら、エマの事務所で働いていた。実際の現場では働けないので、今はリズとエマが現場で、私とまりえが主な事務作業をしている。事務作業と言っても、スタジオに行かないだけで、その他の仕事は全部している。

 今の私はリズとエマのマネージャーのような仕事をしていた。まりえが経理関係を一手に引き受けてくれたから、適所適材なのかもしれない。仕事の内容の資料の中に篠崎さんの名前を見る度に、お兄ちゃんはどうしているだろうかと思う。

 お兄ちゃんに会いたいと思う気持ちと、会うのが怖い気持ちが半々で、私からはメールの返事をするだけの状況だった。私の事務的なメールの返事にも関わらず、お兄ちゃんは毎日メールを欠かさなかった。

 リズが日本で働くようになって、エマとリズの二馬力の勢いは凄く、スタジオ以外の仕事もたくさんある。行く先、行く先で新しい仕事を持って帰ってくるから、バックグラウンドでの仕事もたくさんある。篠崎さんのスタイリストの仕事はエマからリズに変わっていた。

 リズは篠崎さんの仕事のことは言うけど、お兄ちゃんがどうしているかは言わない。聞いたら答えてくれるかもしれないけど、私の方から聞くのも憚られた。
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