イケメンすぎてドン引き!
「…………」
きっと先輩は今、スミスさんのことをにらみつけているんだろう。
スミスさんは無言のまま、気まずそうに後ずさりをした。
あれ……でも……。
吉野先輩、手震えてる?
――キーンコーンカーンコーン。
予鈴のチャイムが校舎から聞こえてきた。
すでに遅刻ギリギリの時間帯のためか、生徒たちがこの道を通るピークは過ぎている。
校舎に向かう数名の男女が、あたしたちを追い越していく。
その足音が遠ざかっていった頃。
「うん。分かった。さすがにオレも親友のオンナには何もしないから。安心して」
と、真面目な声でスミスさんは言った。
ん? いやいやいや。
あたし先輩の彼女とかそういうのじゃないし。
それからスミスさんはあたしの前に来て、
「モモカちゃんも、本当にごめんね! もうしません!」と頭を下げた。
「いえいえ! あたしもこれからは気をつけます! (何をだ?)」
必死になってあやまるスミスさんに、たじろいでしまうあたし。
本当に憎めないキャラだ。ずるいっ!
でも、吉野先輩……大丈夫かな……?
彼のことが心配になり、そわそわしていると。
「あー俺原チャのキー抜くの忘れてた! オブチさん付き合って!」
「ちょっ……遅刻!」
急に先輩に手を引かれ、もと来た道へ連れて行かれる。
「先生には上手く言い訳しとくし。気をつけて~」
スミスさんはいつもの可愛らしい笑顔であたしたちを見送った。