イケメンすぎてドン引き!
「だから、俺にもお前のこともっと受け止めさせてって言ってんじゃん」
「…………」
「お前の弱いとこも、今みたいな可愛いとこも、もっと見せて」
「…………」
抱きしめられた腕の中で、小さく頷くことしかできなかったけど。
降ってくる優しい声と、浴衣越しに感じる先輩の体温によって、今までの自分が新しく塗り替えられていくような気がした。
この胸の高鳴りは、少女漫画を読んでいる時とは違う。
物語の中の女の子になったつもりで、男の子に胸キュンするのではなく。
自分の肌で心で、今ここにいる先輩を感じている。
彼もまた、こんなしょぼい存在のあたしをもっと知ってくれようとしている。
心臓がバクバクいってて、テンパってるはずなのに、
もっと、もっと先輩に近づきたくてたまらない。
――どくん。
あ……先輩の心臓の音も聞こえる。
もっとその音を感じたくて、あたしはごそごそと彼の腕の中で顔の向きを変える。
いつぞや、先輩の鼓動スピードを調べようとしたけど、自分の早すぎる鼓動のせいで、
全然訳がわからなくなってしまったことを思い出した。
あたしを抱きしめてくれている今、先輩のはどうなってるんだろう。