イケメンすぎてドン引き!
耳を彼の胸元に当て、
その音に集中しようと目をつぶったが――。
「……え?」
あることに気がついて、驚きのあまり声を出してしまった。
――嘘でしょ?
この事実を信じていいいのか自信がなくて、頭の中を整理しようとすると。
「あのさ、前にもどっかで俺の心臓に聞き耳たててたよな。お前の耳は聴診器か?」
と先輩は笑いながら聞いてきた。
体が密着している分、声による振動が伝わってくる。
「え、そういうわけじゃ、ないですけど……」
これは夢かと思って、もう一度彼の左胸のあたりに耳をくっつけた。
あ、良かった……。
これは確かなことだ。
あたしは安心して、その温もりに再び身を預けた。
「で、今日の俺の心臓の調子はどーなの?」
「……異常ありです」
「まじ? やばいじゃんそれ」
あたしと先輩の鼓動が刻まれるごとに、
体の中がどんどん幸せなものでいっぱいになっていく。
先輩の背中に手を回し、浴衣をぎゅっと掴んだ。
「だって、あたしと、同じ早さで……鳴ってるから」
声をこもらせながら、そう伝えると、
先輩はへー、と言って、あたしを抱きしめる腕に力を込めた。
今、漫画の主人公じゃなくて、あたし自身が。
目の前にいる先輩に胸をときめかせている。
全身が温かくて幸せなもので満たされていって、
それで彼自身をも包み込んでしまいたくなるほどだった。